畑村氏「結果から学べ」-失敗学流、異例の提言
26日発表した中間報告では、事故の調査報告としては異例とも言える「考察と提言」が盛り込まれた。
報告書には失敗学の観点から安易に「想定外」を認めないメッセージがちりばめられた。
■議論より現場
「調査すべきことは膨大で、まとめ切れないのではないかと危惧したが、何とか形にできた」
野田佳彦首相に中間報告書を手渡した後、畑村氏は会見でそう総括し、「提言をぜひ実行してもらいたい」と政府に促した。
畑村氏が、事故調の基本方針として真っ先に挙げたのは「畑村の考え方で進める」ということ。
机上の議論で済ませず、現地視察から着手し、関係者456人(16日現在)から計900時間の聴取を実施した。
畑村氏は東大の教壇に立つ前に、日立製作所でブルドーザーの開発設計に従事した経験を持つ。
失敗という結果から逆をたどり、要因を突き止める作業を繰り返してきた。
自らの経験から提唱した失敗学について、畑村氏は産経新聞の取材に「人間が何かの活動をすれば、失敗は起きる。悪いことのように決めつけるのではなく、一番大事な結果と考える。それが失敗学だ」と説明していた。
■発言に違和感
畑村氏は「海岸沿いにある原発は津波で損傷すると考えない方がおかしい」と考え、政府や東電が事故説明で繰り返した「想定外」という言葉に納得し難いものを感じてきたという。
中間報告でもこの点に何度も言及した。
大津波の襲来や長時間に及ぶ電源喪失について「十分に確率が低いことと考えられ、想定外と扱われた」と断定。
「原子力は安全である」という思いが事故対策の足かせとなり、少ない危険について「考えるのが難しくなった」と推察している。
■柳田氏と起筆
「子孫のことを考え、100年後の評価に耐えられるものにする」。
事故調の基本方針のひとつだ。
六本木ヒルズ回転ドア事故(平成16年)やJR福知山線脱線事故(17年)などを調査した経験も持つ畑村氏は、責任追及ではなく、未来につながる教訓を見いだすことに力を注ぐべきだと訴え続けてきた。
中間報告でも「発生確率が低い事象であっても、『あり得ることは起こる』と考えるべきだ。『想定外』の事柄にどのように対応すべきかについて重要な教訓を示している」と、将来への視点を忘れなかった。
全507ページからなる中間報告のうち、政府や東電の問題に切り込んだ「第7章」の部分は、畑村氏と、作家で日航ジャンボ機墜落事故(昭和60年)の検証などを手がけた柳田邦男氏(75)の2人が書き起こした。
その柳田氏は会見で、放射性物質拡散予測システム(SPEEDI)の有効活用がされなかったことに関し、「被害者の身になってシステムを動かそうとする意識がなかったことが最大の問題点だ」と断言。
畑村氏は、これまでの調査検証を総括し、「見たくないものは見ない、考えたくないものは考えないという人間の特性を今回の災害は、はっきりと教えてくれた」と述べた。
(イザ!)
失敗学 (図解雑学)-畑村洋太郎
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