地震学会-大震法の抜本改正実現を
東日本大震災を想定できなかった地震学者たちの“大反省会”である。
地震学の問題点を学術的な観点から洗い出すだけでなく、行政とのかかわりや「防災とどう向き合うか」など、地震学者の社会的役割を自ら問いただそうとした姿勢は評価できる。
それぞれのテーマについて議論が尽くせなかった感は否めないが、シンポジウムを出発点として「これからの地震学(者)」のあり方に一定の方向性を見いだしてもらいたい。
地震学者に今、問われているのは、大震災の反省に立脚し「次の巨大地震にどう立ち向かうのか」という指針を示すことだ。
その点で、東京大学のロバート・ゲラー教授がシンポジウムの特別講演で指摘した「大規模地震対策特別措置法(大震法)」の抜本的な改正に向けて、地震学会としても早急に行動すべきだ。
大震法は東海地震の直前予知が可能であることを前提に、昭和53年に施行された。
阪神大震災後に「直前予知は必ずできるとは限らない」と方針転換されたとはいえ、現在の地震学の知見からは乖離(かいり)した状況にある。
最大の問題点は東海地震だけを直前予知の対象とし、東南海・南海地震と切り離して防災体制が構築されていることだ。
東海地震が単独で起きる可能性が指摘された施行当時とは異なり、現在では東海・東南海・南海の連動を視野に入れなければ防災も減災も考えられない。
たとえば、東海地震の前兆現象が観測され、警戒宣言が発令されるケースでも、東南海・南海地震への対応が定められていない現行の大震法は、防災の現場に大きな混乱を生じさせる可能性が極めて大きい。
地震予知を全面否定するゲラー教授の主張に対しては、異論を唱える研究者も少なくない。
しかし、大震法については「抜本改正の必要性」を共通認識にできるのではないか。
東日本大震災の教訓の一つに、巨大津波に関する新しい知見を防災に反映できなかったことが挙げられるが、大震法は同じ過ちの芽をはらんでいる。
地震学者と学会が社会的な役割を担う意味でも、政府への提言などにより大震法改正を実現してもらいたい。
(産経新聞)
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