平成の2つの大震災-仕組み・被害に相違点
どちらも「想定外」だった点では共通しているが、発生の仕組みや被害実態は大きく異なる。
日本を襲った平成の2つの大震災を比較し、その教訓を探った。
日本列島の周辺では、地球の表面を覆う複数のプレート(岩板)がぶつかり合っており、地盤にひずみが蓄積されることで地震が多発する。
■海溝型と内陸直下型
大きな被害をもたらすのは、海側プレートと陸側プレートの境界で起きる海溝型地震と、陸側プレート内部の比較的浅い場所にある活断層の地震だ。
東日本大震災は、太平洋プレートが沈み込む日本海溝で起きた巨大な海溝型地震だ。
これに対して阪神大震災は、兵庫県の淡路島にある活断層「野島断層」が動いて起きた内陸直下型だった。
いわば前者は「海の地震」、後者は「陸の地震」で、性質が基本的に異なる。
エネルギーは東日本の方がはるかに巨大だ。
動いた断層のサイズは、阪神は長さ約40キロ、幅約15キロだが、東日本は長さ約450キロ、幅約200キロで面積は阪神の100倍以上。
断層の滑り量も阪神は最大約2メートルだったが、東日本は最大50メートル以上に達した。
地震の規模を示すマグニチュード(M)は複数の計算式があるが、巨大地震の計算に適したモーメントマグニチュードで比較すると、阪神のM6・9に対して東日本は世界最大級の9・0で、エネルギーに換算すると約1千倍。
阪神の千個分の地震が一度に起きた計算で、東日本がいかに巨大だったか分かる。
■揺れ方の違い
観測された地震波の比較でも、2つの大震災の違いが浮かび上がる。
揺れの激しさを示す加速度の最大値は、阪神の818ガル(神戸市中央区)に対し、東日本は2933ガル(宮城県栗原市築館)と3倍以上。
震度5以上の強い揺れの継続時間は、阪神の約15秒に対し東日本は2分以上に及んだ。
広い震源域が段階的に破壊され、強い揺れが複数回にわたって続いたためだ。
ただ、東日本は、揺れによる被害は地震の規模の割に少なかった。
木造家屋に大きな被害が出る周期1~2秒の「キラーパルス」と呼ばれる地震波が弱かったからで、地盤の影響でキラーパルスが増幅された阪神とは対照的だ。
この差は被害実態の違いに表れている。
東日本は死者の9割以上は津波が原因。
これに対して阪神は家屋や家具の倒壊による圧死が8割以上を占め、火災による焼死なども含めると、犠牲者のほとんどは揺れが原因とみられる。
■繰り返す「想定外」
2つの大震災は地震予知や防災の考え方に大きな影響を与えた。
阪神の野島断層は活断層であることは知られていたが、具体的な切迫度は不明で活動を予測できなかった。
このため国は阪神以降、全国の活断層や海溝型地震の活動歴を調べ、将来の発生を確率的に予測・公表して防災に役立てる長期評価を進めた。
しかし、東日本大震災では、この長期評価で全く想定していない「千年に1度」の巨大地震が起きてしまった。
この反省から、国は過去の歴史記録などに頼る従来の発想を転換。
科学的な知見に基づくあらゆる可能性を考慮し、最大の地震を想定する方針を打ち出した。
観測研究では阪神以降、衛星利用測位システム(GPS)による観測網が全国で整備され、陸域の地殻変動やひずみの蓄積の様子が詳細に分かるようになった。
だが、東日本大震災は、虚を突かれるように観測網が手薄な海域で発生。
国は海の観測体制の抜本的な強化を急いでいる。
一方、防災面では阪神以降、建物の耐震化が進んだが、東日本大震災で津波対策の不備が新たに浮上。
このため津波警報の見直しや、自治体や原子力発電所などで津波想定の再検討が進んでいる。
ただ、津波対策だけがクローズアップされることに危機感を抱く専門家もいる。
東大地震研究所の大木聖子助教は「家が倒れて外に出られなくなったり、倒壊した建物で道路が通行できなくなれば、津波から逃げられない事態が起こり得る」と指摘。
その上で「阪神大震災の教訓も忘れず、耐震化や家具の固定など揺れの対策を進めることが重要だ」と強調している。
(イザ!)
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