南極で増える外来植物、原因は防寒具
外来植物の増加は、研究者や旅行者などが気付かずに持ち込む種子が原因と見られている。
気温、湿度共に極めて低い南極は、過酷な気候条件によって、地球上で最も原始的な自然環境が維持されてきた場所である。
だが近年、観光や学術調査などを目的として南極半島を訪れる人数が急増、独自の生態系が脅かされている可能性があるという。

南極のダンコ島に上陸する観光客たち
今回、南アフリカにあるステレンボッシュ大学の生態学者スティーブン・チョウン(Steven Chown)氏の研究チームが実態調査を行った。
チョウン氏らは、2007年末から2008年初頭にかけての夏季に南極を訪れた研究者や旅行者、随行員、渡航船乗組員に協力を依頼。
南極訪問者のおよそ2%にあたる853人分の着衣、靴、バッグ、装備品の付着物を吸引装置で採取した。
付着物の中からは種子や“むかご”など植物の繁殖体が2600個以上見つかり、多くの外来植物が渡航者によって南極に持ち込まれている実態が明らかになった。
1人あたりの個数では、旅行者は平均2~3個、研究者は平均6個見つかった。
ただし現在の年間渡航者数では、旅行者が研究者を大きく上回っている。
2007~2008年にかけての夏季では、研究者7000人に対し、旅行者は3万3000人という。
チョウン氏は、どちらも南極の生態系に対するリスクに変わりはないと推測している。
■外来種の半数は低温環境に適応
研究チームによると、南極に持ち込まれる外来植物の49~61%は耐寒種で、過酷な条件下でも生育し定着できるという。
植物は主に渡航者の防寒具で運ばれて来たと考えられる。
南極以外の寒冷地で使用した際に植物が付着した可能性がある。
実際今回の調査でも、ハコベなど北極圏に分布する植物が見つかったと報告されている。
外来植物の特性と南極の現在の気候とを考え合わせると、生態への影響が最も危険視される地域は、南極半島の沿岸部およびその周辺の島々だという。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した2100年の気候予測に基づけば、少なくともロス海周辺、場合によってはアメリー棚氷の西側にある沿岸部の不凍地域にまで定着域を拡大する可能性がある。
南極の沿岸部で気温がさらに上昇すれば、外来種の繁殖にも一層の拍車がかかるだろう。
しかしチョウン氏は次のようにも話す。
「南極がある日突然、草花に覆われるわけではない。大半は依然として厚い氷に覆われた非常に過酷な環境で、植物は育たない」。
■装備品の洗浄が重要
極域生態系の専門家である英国南極観測局(BAS)のピーター・コンベイ氏は今回の調査について、「南極における各国政府の調査活動も観光事業も、生態系にとっては大きな危険性をはらんでいるという客観的な証拠を示した」と評価する。
危険を認識できれば、その回避方法も明らかになってくる。
例えば、屋外用の装備品やバッグなどの洗浄だ。
南極に持ち込まれる種子の個数減少に大きな効果があるだろう。
チョウン氏は、南極の生態系への影響を軽減する手立てを講じるためにも、研究結果のさらなる活用を希望している。
(ナショナルジオグラフィック)
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